退職金は税金的には優遇されている一方で、支給する場合には注意も必要

退職金は将来の老後のための資金であると考えられているため、税金は非常に優遇されています。

退職金の税金の計算方法とともに、支給する場合の注意点をまとめてみました。

退職金の税金の計算方法

退職金であっても、もらった場合には税金の対象になります。

退職金の税金を計算する際には、

1.退職所得(退職金のうち税金のかかる部分)を計算する
2.税率をかけて、税金を計算する

といった手順を踏みます。

退職所得を計算する

退職所得は、(退職金の金額 - 退職所得控除額)÷2、によって計算します。

退職所得控除額とは、その金額までであれば税金がかからず、その金額を超えた場合にはその超えた部分にだけ税金がかかるという、ボーダーラインの金額の事です。

退職所得控除額は勤続年数により決まり、原則的には次の表により計算します。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
20年超 70万円×(勤続年数-20年) + 800万円

※勤続年数は、1年未満の端数は1年に切り上げ、2年未満の場合2年で計算します。

例えば24年10か月勤務した場合の退職所得控除額は、

勤続期間 24年10か月 → 25年(1年未満は1年に切り上げ)

退職所得控除額 70万円×(25年-20年)+800万円 = 1,150万円 となります。

つまり、もらった退職金が1,150万円以下であれば、税金はかかりません。

1,150万円以上であれば、1,150万円を超えた部分が税金の対象になります。

税金を計算する

もらった退職金が退職所得控除額を超えた場合には、

(退職金の金額 - 退職所得控除額)÷2 を計算し退職所得を計算します。

退職金の税金の計算は、他の所得(給与や事業など)とは合算せず単独で計算します。

所得税であれば退職所得に所得税の速算表に当てはめて計算します。
(別途、復興特別所得税が2.1%もかかりますが、今回は省略します)

所得税の速算表とは

住民税は、退職所得に10%をかけて計算します。

退職金 2,000万円 勤務年数 24年10カ月(退職所得控除額1,150万円)であれば、

退職所得 (2,000万円 - 1,150万円) ÷ 2 = 425万円
所得税 425万円 × 20% - 427,500円 = 422,500円
住民税 425万円 × 10% = 425,000円

退職金2,000万円に対して、税金は約85万円ほどです。

もし給与が年間2,000万円であれば、税金は約492万円かかります。
(所得控除305万円と仮定した場合)

いかに、退職金が税制上優遇されているのが、お分かりいただけると思います。

個人事業主は退職金を払えない

個人事業主であれば、自分に退職金を支払うことはできません。

そのため、小規模企業共済やiDeCoを利用することで、退職金の税制上の優遇を受けることができます。

小規模企業共済は節税の第一歩

iDeCoのメリット、デメリット

法人の場合、必ず退職すること

自分の作った会社であれば、自分に退職金を払うことができます。

これは、法人成りのメリットの一つです。

ただし退職金を払う場合には、あたりまえですが必ず「退職」することが条件です。

役員の退職金については、税務署は必ず目を光らせます。

金額の大小も問われることがありますが、圧倒的に調べられるのは本当に退職しているかどうかです。

勘定科目は「役員退職金」でも、実態が異なれば賞与として取り扱われます。

役員退職金を税務署から否認されてしまうと、次のような事態が発生してしまいます。

会社の法人税が増える

役員退職金が認められなかった場合には、退職金は全額賞与として扱われます。

役員の賞与は認められていないので、その分会社の利益が増えてしまいます。

退職金2,000万円が認められなかった場合には、おおむね3分の1である667万円の法人税の追加納税が必要になります。

個人の所得税・住民税が増える

退職金が認められず、賞与として扱われると給与所得となってしまい、退職金の税制上の優遇は受けることができません。

上記の退職金 2,000万円 勤務年数 24年10カ月の例であれば、

税金が85万円→492万円と大幅に増えます。

それ以外にも…

税務調査で賞与を否認された場合には、

・過少申告加算税
・延滞税
・不納付加算税(賞与としての源泉所得税を預かっていないため)

といった罰則的な税金もかかります。

役員退職金は税金上かなり優遇される一方で、取り扱いを誤ると個人・会社共に大きなダメージを受けてしまいます。

必ず「退職」するとともに、会社には行かないでください。

<大事なこと>
退職金が税制上優遇されているため、取り扱いには注意しましょう。
金額が大きいため、指摘されると思わぬダメージを受けてしまいます。
退職金なので、かならず退職が必要です。