もし現金があるようだったら、土地を購入すれば確かに相続税が安くなります。
さらに、そこに賃貸用のマンションを建てればさらに相続税が安くなります。
そのメカニズムを考えてみました。
(※気軽に行うことはお勧めできませんので…)
現金が不動産に変わると
現金が土地に変われば、相続税が下がる
相続税は本来、すべての財産を時価で評価して計算することになっています。
ただし、時価と言われてもすべてのモノに時価が決まっているわけではありません。
何のルールもなしに時価ということになると、好き勝手な値段で申告されてしまい、収集がつかなくなってしまいます。
そのため、「財産評価基本通達」なるものがあり、相続税を計算する場合には、そのルールに従って計算してください、ということになっています。
土地については、路線価評価や倍率評価をもとに計算してくださいということになっています。
ところで、相続税の評価をする際には、現金は額面での評価です。
現金が5,000万円あれば、相続税での評価額も5,000万円です。
その5,000万円で土地を購入するとどうなるか?
通常は相続税の評価額が70%程度になるといわれています。
現金が建物に変われば、相続税が下がる
同様に、土地の上に建物を建設すれば相続税が下がります。
建物については、固定資産税評価額×1.0で計算した金額が相続税評価額となります。
この固定資産税評価額という数字は、その名の通り固定資産税を計算するための基になる数字で、市区町村によって決定されます。
この評価、4~6割になることが多いです。
現金5,000万円で建物を建設すれば、半額程度(2,000~3,000万円)の評価になることが一般的です。
購入した不動産を、賃貸用にすれば相続税が下がる
不動産を購入すれば、相続税が下がります。
そして、この不動産を賃貸用にすれば、さらに相続税が下がることになります。
これは、賃貸用にしてしまえば収入は入ってくるようになるものの、その不動産を自由に使うことができなくなります。
そのため入居の状況にもよりますが、上記の評価額からさらに土地については80%程度、建物については70%程度の評価になります。
さらに、その土地を小規模宅地等の特例の対象にすればさらに50%程度の評価になります。
現金1億円で、土地5,000万円・建物5,000万円で購入すれば、
土地については、
5,000万円(現金)→3,500万円(土地を購入)→2,800万円(賃貸用へ)→1,400万円(小規模宅地等の特例を使う)、
建物については、
5,000万円(現金)→2,500万円(土地を購入)→1,750万円(賃貸用へ)
くらいになることが予想されます。
相続税評価1億円が、3,150万円と大きく下げることができる場合があります。
もちろん相続税評価が7割程度下がりますが、土地や建物の価値が7割減になるわけではありません。
※あくまでイメージですので、必ずこのようになるとは限りません
相続税対策にはなるが…
これが、よく言われる不動産を利用した相続税対策のメカニズムです。
ただし、一見よさそうに見える対策ですが相続税以外の問題が大きくなってしまいます。
・現金がなくなるので、相続税が払えなくなる(相続税は基本現金一括納付)
・遺産分割しにくくなる(お金は分けやすいですが、不動産の共有はお勧めできません)
・遺産を自由に使えない(やはりお金の方が自由度は高い)
・相続人が賃貸経営したいのかどうか
・換金するにも時間と手間がかかる
・そもそも不動産投資に成功する保証はない(空室リスク)
・このスキームを融資を受けて行っていれば、返済不能のリスク
・元本が回収できないリスク(売った時に損してしまうと逆効果も)
また明らかに税金逃れの対策と判断されてしまうと、税務署より相続税評価でなく時価評価すべきと否認されてしまうこともあります。
<この記事の考え>
確かに賃貸用不動産を購入することで、相続税対策になりますが、それ以上に別の問題がおきます。相続税税対策としてはあまりお勧めしません。賃貸用不動産の購入というのはひとつの投資であるため、きちんとした物件選びも必要になります。その後もきちんとした経営も行う必要もあります。
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