消費税の納税義務があり、売上高が5,000万円以下の場合には比較的簡易課税の方が有利であることが多いです。ただし、この消費税の簡易課税制度にもデメリットはあります。
事前届出制
簡易課税制度を選ぶ場合には、必ず届出が必要になります。
その届出は、基本的には前年(前事業年度末)までに提出しなければなりません。
個人事業主であれば、令和6年の消費税の申告を簡易課税で計算したい場合には、
令和5年12月31日までに提出する必要がありました。
提出していなくて2割特例も使えないとなると、令和6年は原則課税でしか計算できません。
とはいえ、令和6年はNGだとしても、令和7年分は今から提出すれば簡易課税にすることはできます。12月31日までではありますが、必要であれば今のうちに出しておきましょう。
「もう少し考えてから」などとしていると、忘れてしまうリスクもありますので十分注意しましょう。
また届出を出しているからといって、簡易課税で計算できるとは限りません。
2年前の課税売上高が5,000万円を超えていると、簡易課税で計算はできず、
原則課税でしか計算ができません。
原則課税で計算する場合には、会計ソフトの入力項目も大幅に増えますのでご注意を。
(申告直前にこのことに気付くと、思わぬ手間が増えます)
そして、簡易課税を選んだ場合2年間は計算方法を変更できないので、この点にも注意が必要です。
還付は100%ありません
原則課税で計算すると、設備投資の状況や輸出ビジネスを行っている場合、業績が振るわなかった場合には還付になることがあります。
ところが、簡易課税の場合は売上で預かった消費税に数パーセントをかけて計算するため、消費税の還付はありません。必ず納税です(納税0円が最低です、その際は売上も0円ですが…)。
そのため、消費税が還付になりそうなときは、原則課税で計算できるようにしておかなければなりません。
簡易課税の届出を出していれば、簡易課税をやめる届出(消費税簡易課税制度選択不適用届出書)を出さなければなりません。
この届出も事前届出制で、基本的には前年(前事業年度末)までに提出しなければなりません。
出し忘れてしまって、2年前の課税売上高が5,000万円以下の場合には、必ず簡易課税で計算しなければなりません。そして、還付もありません。
簡易課税というのは、この方法で計算するときも、やめるときにも届出が必要です。
そして、事前届出制であることも注意が必要です。
売上を分ける必要がある
消費税を簡易課税で計算する場合には、支払った消費税を考慮する必要はありません。
その代わりに、売上高(預かった消費税)を6種類に分ける必要があります(この作業は原則課税では必要ありません)。
それが業種によっては、非常に細かくなることがあります。
例えば飲食店であれば、
・イートイン…第4種事業(預かった消費税の40%を納付)
・テイクアウト…第3種事業(預かった消費税の30%を納付)
・調理しないでそのまま販売…第2種事業(預かった消費税の20%を納付)
・不要になった調理器具を売却…第4種事業(預かった消費税の40%を納付)
などと、分類する必要があります。
そして分けなかった場合には、
自分の事業の中で、一番税金が高くなる事業だけをやっていたとして扱われます。
(上記の例で言えば、すべて第4種事業)
自分の事業が、複数にまたがりそうなときには注意が必要です。
<大事なこと>
簡易課税は、原則課税で計算するよりは手間は少ないですが、事前届出制のため扱いには十分注意が必要です。また、原則課税・簡易課税のどちらで計算しなければいけないのか、事前に調べておきましょう(原則課税か簡易課税の選択ミスでの申告は100%税務署から指摘されます)。
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