本来お客様が負担すべき売上代金の振込手数料をこちらで負担する場合には、返還インボイスを作成しなければならないことになっていますが、金額が小さいことから、返還インボイスの作成は不要です。
返還インボイスとは
請求書を発行した後で値引きをした場合には、返還インボイスというものを発行する必要があります。返還インボイスとは、簡単に言うと、請求書の値引き版みたいなものです。
通常のインボイス(請求書)と同様に、
1 自分の名前または会社名
2 インボイスの登録番号
3 日付
4 内容(品名など 軽減税率の場合にはその旨)
5 税率ごとの合計と適用税率
6 税率ごとの消費税
7 相手の名前
を記載して、相手に渡す必要があります。
値引きをした場合には、インボイス(通常の請求書)+返還インボイス(値引きの請求書版)の2枚を交付する必要があります。
ただし、インボイス(通常の請求書)+返還インボイス(値引きの請求書版)を1枚の請求書としても大丈夫です。
また、値引き額が税込1万円未満であれば返還インボイスの作成は不要です。
振込手数料をこちらで負担する場合には不要
ところで、売上の代金をお客様から振り込んでもらう際に、お客様の振込手数料から引かれて入金されていることがあります。本来お客様が負担すべき振込手数料を、こちらで負担するような慣習があります。
この場合でも、本来的には振込手数料をこちらで負担したというより、振込手数料分を値引きをしたということになり、返還インボイスという書類の作成が必要なのですが、この金額は通常1万円未満であるため、返還インボイスの作成は不要です。
ただし、経理処理にはちょっとした注意が必要です。
微妙に変わる経理処理
値引きや支払手数料として処理する方法
振込手数料をこちらで負担した場合には、請求した金額と実際に入金された金額の差額は、振込手数料相当額ということで、このように処理をするケースが多いのではないでしょうか。
普通預金 | 99,450 | 売掛金 | 100,000 |
支払手数料 | 550 |
インボイス制度開始後は、このように処理するようになります。
普通預金 | 99,450 | 売掛金 | 100,000 |
売上値引 (または支払手数料) |
550 |
ほとんど変わりないのですが、
・消費税の扱いは、課税仕入れ(消費税でいう経費)から売上返還(売上の値引き)
・支払手数料であっても、消費税の扱いは売上返還(売上の値引き)
・売掛金の内容が8%である場合(食品など)は、振込手数料相当額の値引きであっても8%
・返還インボイスの作成は税込1万円未満であれば不要
といった処理をする必要があります(非常に細かいことですが)。
他の処理方法
・お客様が代金決済という作業をしたという扱いにして、振込手数料を請求する方法
(ただし、お客様が代金決済についての請求書を作成する必要あり)
・お客様が振込手数料を立て替えたことにして、振込手数料を請求する方法
(ただし、お客様が立替金請求書と金融機関の領収書が必要)
といったことも考えられますが、お客様への手間や負担がかかることから、現実的ではないかと思われます。
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