インボイスの登録をしないで、値引き対応するのはアリか

消費税の免税事業者が、インボイスの登録をするかどうかは悩ましいものです。
一方で、お客様の金銭的負担をかけないよう、値引き対応するといったことも一つの方法ですが、
デメリットもあります。

免税事業者だとお客様の負担が増える

インボイス制度開始が始まると、消費税を原則課税で計算している場合には、
相手が免税事業者であった場合には、3年間は相手に払った消費税の80%しか引くことができなくなり、消費税の納税負担が増えてしまいます。

消費税の納税負担を解消するために、そのため消費税を原則課税で計算している場合には、免税事業者に対してインボイスの登録をお願いすることになるわけです。

免税事業者がインボイスの登録をした場合、今まで納めていなかった消費税を負担しなければならないばかりか、消費税の申告自体も行わなければならなくなります。

値引き対応のメリット

インボイスの登録をしないで、相手の消費税の金銭的負担をなくす方法として、相手の消費税負担が増える2%分を値引きする方法が考えられます。

相手が払った消費税10%のうち、20%が引くことができなくなるので、
2%(10%×20%)を値引きすれば、おおむね、お客様の金銭負担は解消ができます。

値引きで対応することができるような場合には、
・お客様の金銭的負担がなくなる
・消費税の申告をしなくて済む
・消費税の負担のないお客様(免税事業者・簡易課税で計算しているお客様)には、
値引きしないなどの柔軟な対応ができる
といったメリットもありますが、デメリットもあります。

値引き対応のデメリット

お客様との交渉が必要

値引きで対応するには、お客様との交渉が必要になります。
またこの際に、お客様が消費税をどのように計算しているかを聞き出す必要があります。

取引先が少なかったり、関係が良好であれば問題ないのですが、
基本的には、すべてのお客様と交渉しなければならず、非常に手間がかかります。

3年後、6年後には再度値引きする必要あり

インボイス制度が始まると、消費税の原則課税で計算している場合に、
相手が免税事業者の場合に、引くことができる消費税は80%となり、20%はカットされます。

ただし、これは3年間だけのルールであり、
令和8年10月からは、引くことができる消費税は50%(50%カット)
令和11年10月からは、一切消費税を引くことができなくなります(全額カット)
となってしまいます。

そのため、2%の値引きで対応できるまでは3年間だけであり、
今後もお客様の消費税負担をなくすためには、
令和8年10月からは5%値引き、令和11年10月以降は10%値引きする必要があります。

インボイスを登録した場合に値引きを解消してもらえるかどうか

本来、インボイスに登録するかどうかは自由です。

ただし、今は消費税の免税事業者であっても、売上高が1,000万円を超えてしまったりすると、2年後には、インボイスの登録するかどうかにかかわらず、消費税は納めなくてはならなくなります。

その時に、値引きして対応をしていた場合に、値引き対応を解消したいのであれば、再度相手に交渉する必要があります。

金銭的な負担が変わらないとはいえ、こちらの都合で一方的に、いきなり値下げの解消は難しいでしょう。

お客様にとっては「値下げの解消=値上げ」と感じてしまうでしょう。


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