相続税対策で子や孫に贈与をすることはあっても、奥様に贈与をするケースはあまり見かけません。
ただし、相続税対策においては、奥様に贈与することも大いに有効です。
配偶者に対する贈与の勘違い?
配偶者は、相続税ではかなり優遇されています。
1億6千万円又は、全財産の2分の1までもらっても、相続税はかからないことになっています。
このルールがあるせいか、奥様に贈与をしなくても、相続税が0円になるのだから贈与をしても意味がないと考えている方が多いのではないでしょうか。
これは、相続税が0円になるという理屈では正解ですが、意味がないかというとそんなことはありません。
奥様への贈与も、意味はあります。
相続税の計算方法
相続税の計算方法はこのように計算をします。
1.亡くなった方の財産の総額を計算する
2.基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)を計算する
※財産がこの金額以下だったら相続税がかからないという金額
3. 1(財産の総額)-2(基礎控除額)を計算する
※この金額がプラスだったら、相続税がかかることになります
4.3の金額を法定相続分で分けたとして、各々の相続税を計算する。
5.4の各々の相続税を合計する(これが全員で払う相続税です)
6.もらった分に応じて、各々の支払う相続税を計算する
つまり、財産の総額が少なくなればなるほど、相続税は少なくて済むことになります。
旦那様の財産を奥様に贈与して財産を減らしても、奥様の相続税は0円で変わらないものの、お子様の相続税が少なくなるといったことが起きます。わかりづらい話ではあるのですが。
奥様に贈与する効果
とはいえ、わかりづらいので、次の事例で考えてみます。
・旦那様の財産1億円
・奥様の財産は、ほとんどない
・奥様に毎年100万円ずつ10年間贈与(かなり前に贈与、さかのぼりの加算なしと仮定)
旦那様の財産は9,000万円、奥様の財産1,000万円に変わります。
・家族構成は、旦那様・奥様・お子様2人
旦那様が先に亡くなった場合
もし贈与をしていなければ、財産は1億円、それに対する相続税は630万円です(6.3%)。
贈与をしていた場合には、財産は9,000万円、それに対する相続税は480万円です(5.4%)。
ある程度財産を分ける場合には、0.9%ほどの税金が安くなります。
奥様が全て財産をもらった場合であれば、相続税が0円という事実は変わりませんが、2次相続の際に相続人が1人減るので、その分相続税はトータルで上がる可能性があります。
奥様が先に亡くなった場合
奥様が先に亡くなった場合には、旦那様から奥様に贈与した1,000万円(例でいうと100万円×10年)を相続税がかからず、お子様に移転できることになります。もちろん遺産分割で、お子様にすべて配分することが条件となりますが。
その後旦那様が亡くなった場合、法定相続人が2人になる分相続税が増えますが、
贈与をしていた場合、財産9,000円 相続税620万円。
贈与をしていなければ、財産1億円 相続税770万円。
150万円ほどの差があります。
相続税対策は時間がかかります
上記の例のとおり、配偶者間での贈与を行うことでも相続税の対策ができます。
ただし、例外もあり奥様も財産を持っている場合には逆効果になることもあります。
慎重にシュミレーションすることも必要です。
そして、相続税対策はとても時間がかかります。この例でも、10年+さかのぼりの3年(7年)ほどの期間が必要です。もし必要であれば、早めに行動することをお勧めします。
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