自宅を売却した場合には、3,000万円の特別控除+軽減税率という特例を使うことができますが、
その特例以外に、住宅を買い換えた場合にはもう一つ別の特例があり、有利な方法を選ぶことができます。
ただし、こちらの特例を使用する場合には将来にわたって注意が必要です。
居住用財産の買換え特例
この特例は、自宅を買い替えた場合に使える特例で、
買い換えた住宅の購入価格と、売った住宅の売却価格を比較して、
買い換えた自宅の購入価格の方が高い場合(売却価格ですべて賄えるような場合)には、その時の売買はなかったものとしてくれます。
また、売却価格の方が高い場合には、その差額分(自己負担した分)のみが、税金の対象になるという特例です。
本来は、自宅を買い替えた場合には、売った住宅は買い替えた自宅とは関係なく、利益が出た場合には、税金の対象になってしまいますが、その利益の全部(または一部)をなかったことにしてくれるので、多額の納税を一時的に回避することができます。
これを使うには、
・10年以上所有
・住んでいる(または住んでいたが3年程度住んでいない)
・売れた値段が1億円以下
・他の特例を使っていない
といった条件が必要です。
具体的な計算方法
具体例として、売った自宅の売却価格2,000万円 取得費450万円 譲渡費用50万円をもとに考えてみます。
売却価格 ≦ 買換価格
買い替えた自宅の購入価格が3,000万円だった場合には、通常通りに計算すると1,500万円の利益が出ることになり、税金は約305万円ほどになります。
(3,000万円控除を使うと税金は出ないのですが…)
ただし、この場合には利益はなしという扱いにすることができ、納税はありません。
売却価格 > 買換価格
では、買い換えた自宅の購入価格が1,500万円の場合にはどうか。
この場合には、売却価格2,000万円のうち
・1,500万円部分(75%)は買い換えたことになるので、利益はなし
・500万円部分(25%)は、買換えに充てていないので、通常の売却扱い
ということになり、売却価格は500万円として考えます。
ところで、取得費450万円と譲渡費用50万円を引いて、利益0円として扱っていいのかというと、そのようなことはなく、買換えた部分は使えず、通常の売却扱いになる部分だけです。
この場合には25%しか使えず、
引いていいのは、125万円(500万円×25%)だけとなり、
利益は、375万円(500万円 - 125万円)という形になり、税金は約76.2万円ほどです。
将来の売却には要注意
ところでこの買換えの特例で厄介な点は、その買換えたものを再度売却する場合です。
この際には、以前買い換えた部分に利益が出ていれば、その分も合わせて課税されてしまいます。
例えば、さきほどの3,000万円で買換えた住宅を4,000万円で売れた場合には、
利益1,000万円(4,000万円 - 3,000万円)とはならずに、
以前買い換えた際に、普通に計算していた場合の利益1,500万円も加算されてしまいます。
つまり、3,000万円で買った住宅を4,000万円で売却しても、
利益2,500万円という扱いになってしまいます。
つまり、この特例は買い換えた場合には利益が出てもその利益は先送りにするけども、その買換えたものを売却した時に精算してくださいね、というものです。
つまり、納税を先送りにしているにすぎません。
そして、このような特例を使って納税を先送りしている状況は、税務署は100%把握していますし、何年たっても先送りしていることを忘れてくれることはありません。
このような特例を使う場合には、次に売却した時の取得費(買った値段)は通常通り使えませんので、買い替えた際にはあらかじめ計算しておきましょう。
ちなみに、この自宅の買換え特例をつかったときに、再度売却した時の取得費は、以下のように特別な計算方法を使用します。
売却価格 ≦ 買換価格 | (売った自宅の取得費 + 譲渡費用)+(買い換えた自宅の取得費 - 売った住宅の売却価格) |
売却価格 > 買換価格 | (売った自宅の取得費 + 譲渡費用)×(買い換えた自宅の取得費 ÷ 売った自宅の売却価格) |
<大事なこと>
自宅の買換え特例は、申告時には有利なのですが、先送りした税金を忘れてしまうと、売却時に思わぬ課税が生じてしまうことがあります。
自宅の売却の場合には、3,000万円の特別控除+軽減税率または新しい自宅での住宅ローン控除の方が有利になるケースがほとんどです。
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