特別償却と特別控除のどちらを使うべきか?

大きな設備投資をした場合には、通常の減価償却費に上乗せできる特別償却と、税金を引いてくれる特別控除という2つの制度が利用できる可能性があります。

両方を使うことはできないので、どちらかを選ばなければならないのですが、基本的には特別控除の方が有利に働きます。

高額な設備を購入した場合に使える特典

特別償却の仕組み

特別償却のメリットは、購入した年に通常の減価償却費に上乗せして、初年度に大幅な経費を計上することができます。

ただし、減価償却費の総額が増えるわけでなく、毎年の割振り額が変わるだけです。

耐用年数8年(定額法)の設備を200万円で購入した場合の、減価償却費はこのようになります。

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目
通常 25 25 25 25 25 25 25 25
特別償却30% 85 25 25 25 25 15
特別償却100% 200

2年目以降は、減価償却費を計上できる金額が少なくなったり、減価償却費を計上できる期間が短くなります。

わかりやすく、通常の減価償却費と特別償却100%を比較すると、

1年目では175万円利益が少なくなるので、税率が25%の場合には43.75万円税金が少なくなります(税額控除を考慮しない場合)。

ただし、2年目以降は利益が25万円増えるので、税率が25%の場合には6.25万円税金が増えてしまいます。

特別償却は長期的な目線で見れば、±0だったりします。
ただし、初年度に大きな経費が計上できるので税金分の資金繰りはよくなります。

特別控除のしくみ

特別控除の場合には、初年度に設備の購入金額の7%(or10%)分の税金が安くなります。

さきほどの200万円の設備を購入した場合には、7%の場合には14万円、10%の場合には20万円の所得税や法人税が安くなります。

特別控除をした場合でも、通常の減価償却費は計上できますので、数年後のデメリットはありません。単純に税金が安くなることがプラスに働きます。

特別償却は、初年度のみプラスに働きますが、その後はマイナスに働き、トータルでは±0。

特別控除は、初年度はプラスに働き、その後は影響なし、税額控除分は安くなります。

その時々の税率によって結果は異なることもありますが、基本的には税額控除の方が有利に働きます。

ただし、法人税や所得税の20%の限度があり、税額控除できなかった場合には翌年に繰り越しになります。

2つ以上ある場合

対象となる資産が複数ある場合には、それぞれの設備に対して選択することができます。

以前、このような事例がありました。

現時点での利益が1,500万円、1,000万円と500万円の設備を購入(いずれも100%償却or10%の税額控除ができるもの)したのですが、それに加えて今期の400~500万円ほどの税額も気になるとのこと。

いずれも税額控除を選択し150万円プラスになることが有利と考えていたのですが、限度を計算すると今期と来期であわせて3,500万円以上利益がないと使いきることができないことがわかりました。

2期で3500万円の利益はムリであるとともに、今期の税額も気になるとのことだったので、
1,000万円の設備については税額控除を選択し、500万円の設備には100%償却を選択しました。
税額控除のメリットが無理のない範囲で受けられるとともに、利益も法人税の税率が上がる800万円を少し超えるところで落ち着きました。

<大事なこと>
基本的には税額控除の方が有利に働くことの方が多いですが、場合によっては特別償却が有利であることもあります。

<昨日の出来事>
昨日はお客様の年末調整の書類の準備と経理処理を午前中に。
午後はランニング17km、だいぶ寒くなってきましたね。


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