無料相談の機会で相続や贈与の相談に答えにくくなった理由

独立してから、自治体や税理士会の主催する無料相談の相談員としてつとめる機会が増えました。

その中の相談で多いのが、相続や贈与に関することです。

ところが、税金のルールも変化しており、だんだん適切なお答えをするのが難しくなったように思います。その理由と、無料相談で私が考えていることをまとめてみました。

生前贈与

相続税の負担を少なくするために生前贈与を検討している方は、比較的多いように思います。

とはいえ、情報がいろいろあり、なにをどうしたらいいかわからないといったことはよくお聞きします。

ご相談に関しては、簡単な手続きのやり方と注意点をご説明することで、比較的喜んでいただけることが多いです。

ところが、税務面に関してはかなりの説明が難しくなりました。

令和6年から、生前贈与のさかのぼり期間が7年に伸びたことと、相続時精算課税の110万円の基礎控除ができたことです。

以前までは、相続時精算課税制度をおすすめすることはまずありませんでしたので、この件でご相談を受けたときは、この点を説明することはありませんでした。

ところが、110万円の現金贈与の場合、相続時精算課税制度を使ったほうが有利になるケースがかなり増えました。

とはいえ、相続時精算課税制度のことまで説明すると、無料相談の時間のワク(30分前後がほとんどです)だとかなり厳しいのが現実です。相続時精算課税制度はリスクもありますので、安易にすすめるわけにもいきませんので。

相談員の立場からすると、悩ましい問題のひとつです。

マンション

無料相談での相続税の相談で最も多いのが、そもそも申告の必要があるのかどうかの内容です。

このときに、即答できるのは明らかに相続税の納税義務がある場合と、基礎控除に明らかに満たないであろうと判断できるときです。

その2つに該当しない場合には、簡単な試算をしてみて判断してみるわけです。

その方が不動産をお持ちの場合、一戸建てにお住まいなのか、マンションなのかで状況が一気に変わります。

一戸建ての場合には、土地は路線価×面積をベースに判断すれば大まかな数字を把握できます。建物も固定資産税の明細を見れば、ほぼ間違えなく確認できます。

ところがマンションの場合、令和6年から特殊な補正率を加味しなければならず、その場で判断することが非常に難しくなりました。

実際のマンション評価に使う区分所有補正率の計算のしかた

ここまでの計算は30分だと難しいのが現実です。

マンションがある場合には、そもそも敷地も広く、かつこのような補正率を加味するなどと、非常に難しいです(さらに共有持分を確認する必要もありますので)。

無料相談の現実

私だけかもしれませんが、相続税に限らず、どのような税目でも申告不要と言うのは意外と度胸がいります。限られた時間内で、見なければならないすべての資料に目を通すことは現実的に不可能だからです。

そのため、明らかにという方以外には、ご自身で再計算していただくか、別途他で細かく試算していただくことをおすすめすることになってしまいます。

こういった無料相談は頻繁にあるわけではなく、予約自体を取るのも難しいようです。予約が取れたとしても100%すべてのご期待に添えることはできません。やはり、30分というのはできることは限られます。

次にどのように進んでいけばいいかを、ご案内できるのが精一杯です。

ここで、申告が必要+期限が迫っている場合には、無料相談はやめておくべきです。無料相談の機会を待つのでなく、有料でもいいのでとにかくすみやかに先に進みましょう。有料であればすぐ何らかの対応はしてくれます。

無料相談は来ていただいたとしても、話が多少進展する程度で、その場で解決することはありません。期限が迫っている場合には、時間のほうが大事になってきます。

無料相談はすべてを解決する場所ではなく、ピンポイントのことだけを解決できる場だと思った方がいいでしょう。

<昨日の出来事>
朝にブログとクレジットカードの明細のチェック。
その後、ほぼ終日、遠方のお客様のもとへ。

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