開業当初は、何かと準備をするために経費がかさむことに加え、
売上も軌道に乗るまでは、伸び悩むことから、利益も税金も少なくなる傾向にあります。
ただし、今後軌道に乗ることを期待して、全額経費に計上せず、
開業費として一部を繰り延べることによって、将来の節税をすることができます。
開業直前の様子(今はこたつは片づけてます)
Contents
開業費とは
開業費とは、事業を開始するまでに、開業準備のためにかかった経費です。
通常の経費であれば、モノを買ったときや、サービスを受けたときに計上しなければいけませんが、
開業費であれば、特に制限はなく、いつでも経費にすることができます。
そのため、初年度で赤字になってしまった場合などにあえて経費に落とさずに、
軌道に乗った数年後の利益が出たときに、まとめて経費に落とすことが可能です。
もちろん、初年度から利益が出ている場合には、通常通り初年度に経費に入れても
大丈夫です。
開業費に計上できるもの
開業費には、
・事務所の家賃や光熱費
・従業員の給与
・名刺の作成費用
・広告費
・セミナー代や書籍代
・交通費
・打ち合わせの費用
など、開業前に事業の準備のためにかかった費用が該当します。
ただし、なんでも開業費に計上していいわけではなく、
・商品などの仕入れ代金(売れるまで経費にできない)
・車や備品など(10万円以上のもので、数年にわたって経費にしなければいけないもの)
・敷金や礼金(経費に落とせなかったり、数年にわたって経費にしなければいけないもの)
などは、開業費にはできず、開業後と同様の処理が必要です。
また開業前の経費であったとしても、いくらでもさかのぼっていいわけではありません。
いつまでのモノを経費にしていいというような決まりはありませんが、
1~2年位が無難なところでしょう。
また、税務署から問い合わせがあってもいいように、証拠書類(領収書など)は、
必ず整えておく必要があります。
当然、「○○円くらいかかった」みたいな、あいまいで根拠のないものはNGです。
開業費に計上した場合
本来は、早めに経費にしたいと思うのが、税金が安くなると思われがちですが、
開業費での節税は、開業した年に、開業費として経費に計上しないで節税するという、
ちょっと不自然な考え方かと思います。
具体的に、初年度に利益が50万円(経費にしたうちの100万円が開業費に該当)であった場合に
ついて、考えてみます。
もし、開業費として初年度に計上すれば、利益は150万円です。
初年度の税金は、当然ながら、開業費を計上せず、通常通りの経費にした方が有利になります。
開業費を計上 | 開業費を計上しなかった | |
所得 | 150万円 | 50万円 |
青色特別控除 | -65万円 | -50万円(15万円分切捨て) |
基礎控除 | -48万円 | 0円(48万円分切捨て) |
所得 | 37万円 | 0円 |
所得税 | 18,800円 | 0円 |
次の年に、事業が軌道に乗り、利益が1,000万円出た場合に、
前年に計上した開業費を経費に入れると、このようになります。
開業費を計上 | 開業費を計上しなかった | |
所得 | 1,000万円 | 1,000万円 |
開業費 | -100万円 | 0円 |
青色特別控除 | -65万円 | -65万円 |
基礎控除 | -48万円 | -48万円 |
所得 | 787万円 | 887万円 |
所得税 | 1,198,700円 | 1,433,500円 |
開業費に計上した場合には、2年間で約122万円
開業費を計上しなかった場合には、2年間で約143万円
20万円以上もの差が出てしまいます。
開業費を計上したほうが節税になる場合は、
・初年度に青色申告特別控除(65万円、55万円、10万円)が切捨てになっている
・初年度に所得控除(社会保険料控除や扶養控除、基礎控除)が切捨てになっている
・初年度の税金はかかるが税率が低い(上の例では初年度5%、2年目23%です)
場合で、さらには今後軌道に乗って、利益が出て税金が高くなりそうな場合です。
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