税金は高くなるが、定額法を選ぶメリット

減価償却をする方法には、定率法と定額法と2通りの計算方法を選べるものもあります。
定率法の方が早く経費にすることができるので節税にはいいのですが、あえて定額法を選ぶメリットを考えてみました。

減価償却費のルール

30万円以上のモノを買うと、1回で経費にすることはできません。
何年かに分けて、少しずつ経費にしていくことになります。

その際には、定額法と定率法の2通り選べるものがあります。

定額法とは、毎年同じ金額で経費にしていく方法です。
1,000万円のモノを5年で償却しなければならない場合には、
毎年200万円(1,000万円÷5年)を5年間毎年経費にしていくことになります。

定率法とは、まだ減価償却していない部分(簿価:買った金額-減価償却した金額)に、
一定率をかけて、経費にしていく方法です。
1,000万円のモノを5年で償却しなければならない場合には、

1年目 : 10,000,000円 × 0.400 = 4,000,000円
2年目 : 10,000,000円 – 4,000,000円= 6,000,000円(簿価)
6,000,000円 × 0.400 = 2,400,000円
3年目 : 6,000,000円 – 2,400,000円 = 3,600,000円(簿価)
3,600,000円 × 0.400 = 1,440,000円
4年目 : 3,600,000円 - 1,440,000円 = 2,160,000円(簿価)
2,160,000円 × 0.500 = 1,080,000円
5年目 : 1,080,000円

と、定額法に比べて計算は複雑です。
手計算をする機会はほとんどないので、あまり苦労することはありませんが。
なお、計算の過程は省略していますが、ある程度の金額に達したら、残りは定額法で計算することになっています。

定額法と定率法を比較すると、このようになります。

定額法 定率法 差額
1年目 2,000,000 4,000,000 2,000,000
2年目 2,000,000 2,400,000 400,000
3年目 2,000,000 1,440,000 -560,000
4年目 2,000,000 1,080,000 -920,000
5年目 2,000,000 1,080,000 -920,000
合計 10,000,000 10,000,000 0

1年目は、圧倒的に定率法の方が、たくさん経費に計上できます。
ただし、ある程度の年数がたつと、定率法は経費にできる金額は極端に少なくなります。
最終的には、経費にできる金額は定額法であっても、定率法であっても同じです。

計算方法を選べるものもある

減価償却費の計算方法は、選べるもの、選べないものがあります。

計算方法が定額法のみでしか計算できないものは、建物、建物附属設備、構築物です。

定額法と定率法のどちらかを選べることができるのは、機械及び装置、車両、器具及び備品です。
ただし基本的には、個人事業主は定額法、法人は定率法で計算することになっています。
変更したい場合には、届出書を出す必要があります。

定額法を選ぶメリット

定率法であれば、経費にできる金額は変わらないものの、早い段階で大きな金額を経費にすることができるので、税金上のメリットは大きいです。

では、定額法のメリットは何か?

それは、経費にできる金額が一定なので、利益が安定しやすいことです。
定率法は、初めの数年で大きな減価償却ができて節税にはいいのですが、利益は出しにくくなってしまいます。減価償却費を計上して赤字になるということは、設備投資したお金を回収できていないことを意味してしまいます。

上記の例だと1年目に減価償却できるのは、定率法なら400万円、定額法なら200万円です。
もし定率法で100万円の赤字であれば、定額法ならば100万円の黒字です。

法人であれば、減価償却する金額を減らすことも可能ですが、どこかに帳簿に操作した事実は残ります。場合によっては、粉飾決算も疑われてしまいます。

また、計算が簡単なので、利益が把握しやすいこともあります。利益計画も立てやすいです。
もちろん、いつの間にか減価償却費が大きく減っていたなんてこともなくなります。