従業員の給与が増えれば税金が安くなる特例があります

従業員を雇っていて、去年より給与を多く支払っていれば、税金が安くなる制度があります。
一体どのようなものか、まとめてみました。

賃上げ促進税制とは

賃上げ促進税制は、単純に去年より従業員に支払う給与が一定以上増えていたら、税金が安くなる制度です。大企業版と中小企業版があります(記載しているのは中小企業版です)。

そして、個人事業主、法人どちらでも使うことができます。

ルール上は、R6.3.31までにスタートする事業年度(個人の場合、令和5,6年)までとなっていますが、例年延長されていきます。ただし、細かいルールは変更されることがほとんどです。

具体的には、
1.去年より給与が1.5%以上増えていた場合 → 増えた分×15%の税金が安くなります
2.去年より給与が2.5%以上増えていた場合 → 増えた分×30%の税金が安くなります

増えた割合を計算するには、
(今年の給与 - 去年の給与)÷ 去年の給与 で計算します。

さらに、教育訓練費が10%増えていた場合には、
1.去年より給与が1.5%以上増えていた場合 → 増えた分×25%の税金が安くなります
2.去年より給与が2.5%以上増えていた場合 → 増えた分×40%の税金が安くなります

ただし、法人税や所得税の20%が上限になります。

例えば、去年の給与が1,000万円、今年の給与が1,200万円とすると、
(1,200万円(今年分) - 1,000万円(去年分))÷ 1,000万円(去年分) = 20%
で、2.5%以上給与が増えていることになり、
給与が増えた分200万円×25%=50万円ほどの税金が安くなります。

賃上げ促進税制は、従業員が少ない場合には、社員1人雇っただけで使えるようになることもよくあります(従業員1人退職しただけで使えなくなることもよくありますが)。

賃上げ促進税制は、お金を払うことなく(給与は払うことになりますが…)税金が安くなる制度であるため、使えるようだったらぜひ使いましょう。

賃上げ促進税制の注意点

身内の給与はNG

賃上げ促進税制は、自分はもちろん、家族や兄弟などの身内、役員に対するものは除外して考えます。

税金を安くするために自分の給与を増やして…、とはできません。

そのため、青色専従者しかいない個人事業主や、家族のみで経営している会社では、一切恩恵を受けることができません。

助成金をもらっている場合

賃上げ促進税制を使えるかどうかを判定する際に、雇用調整助成金やキャリアアップ助成金などの給与に紐づいている助成金をもらっている場合には、給与から引いて判定しなければいけません。

給与に絡む助成金をもらっている場合には、注意して計算しましょう。

節税として使うには

賃上げ促進税制をうまく使うには、個人事業主であれば12月には、会社であれば決算期末までに一度使えるかどうか、検討しておきましょう。

去年より明らかに少なければ、何も対策しなくて済みます。
使えそうであれば、事前に計算しておけば、多少給与を上乗せすることも選択肢にできます。

終わってみたら、1.49…%増えていた…なんていうのは悲しいですのですよね(もちろん受けれません)。

それから、いくら給与が増えていても税金が0だったら、使えません。
税額がどれくらいなるのかも、事前に調べておく必要もあります。
赤字だったら、そもそも使えません。

事前に対策できるように、日頃から経理を溜めないもポイントです。

決算書をまとめて作成するデメリット

臨時ボーナスを支給して適用を受けることもOKです。
もちろん、もらった従業員のモチベーションも上がるでしょう。
ただし、来年以降のことを考えると、逆にデメリットになる場合もありますのでご注意を。
「なんで今年はないの…」と、モチベーションダウンしてしまうこともありますので。

一番注意したいのが、賃上げ促進税制の使い忘れです。更正の請求はできませんので十分ご注意を。