法人成りをすれば手取額が減る

節税対策のひとつの法人成りは、税金は安くなる傾向は高いですが、その割には手取り額が増えません。

法人に利益を残す

個人の場合には売上から経費を引いたものが利益となり、おおむねその分のお金が増えていきます。その増えた分のお金から税金や社会保険料を払わなくてはいけませんが、残ったお金は何の制約もなく自由に使うことができます。

法人の場合は、売上から経費を引いた残りの一部から自分の定額の給料を引いていくというイメージになります。給料でもらった分は個人の利益、残ったものが法人の利益と考えられます。

個人の税金と法人の税金のバランスをとりつつ、法人に利益を残すことが税金を少なくする一つのポイントになるわけです。

ところで、個人と法人の利益をプラスすれば手取り額という面では同じだったとしても、法人に残した利益は、自分の会社であったとしても自由に使えるお金ではありません。

給料や配当などといった形をとってもらうことしかできません。もちろんその際には、税金がかかります。

さらに、法人に利益を残している分、個人の手取りは少なくなることは言うまでもありません。

税金が少なくなっても社会保険料が増加する

法人成りをすれば、税金が少なくなるのでその分お金が増えそうですが、そうならない原因に社会保険料が増加することがあります。

とくに、年金の支払額の増加はとても顕著で、給与を63.5万円以上に設定した場合には、
国民年金の約20万円から、厚生年金の約144万円(月12万円)と年間120万円ほどアップします。

厚生年金は、個人と会社で半分ずつ負担するのがルールになっていますが、会社が負担するといっても自分の会社なので、実質自分が負担するのと同じです。誰も助けてくれません。

厚生年金を払うことで、給料の所得税(社会保険料控除)や、会社の経費になり税負担は少なくなるとともに、将来受け取る金額も増えることになるので、立派な節税のひとつではありますが、短期的に見ると手取り額の減少の原因ともなっています。

もちろん健康保険料についても同様です。国民健康保険はさほど安くないので年金ほどの負担額の差は出ませんが、上限の金額は健康保険の方が上です。

法人成りの一番のネックは健康保険と年金

将来は退職金へ

法人に利益を蓄積したところで、いずれかはそのお金を回収する必要があります。

その際に会社を閉めた場合には、会社に残ったお金を退職金という形で回収することで、大きな節税が可能になります。退職金で受け取ると、税金がかなり優遇されているからです。この形で終わることが、法人成りでのゴールのひとつです。

ただし、トータルでの手取り額が多くなったとしても、退職する最後までお金を自分のものにすることができません。それまでは、法人に利益を蓄積しておく必要があるので、自由度は少ないです。

また、退職金に対する税金のルールが将来にわたって変わらないことが前提です。退職金に対する税金はかなり優遇されているため、何かしら不利な改正があることも考えられます。

実際の事はその時になってみないとわかりませんが、現状での理想のゴールのひとつのカタチです。

<大事なこと>
法人成り=節税=自由に使えるお金が増える、という理想のカタチにはなりません。
自分の手取り額はむしろ少なくなると考えておいた方がいいです。

<昨日の出来事>
午前中は税理士会の研修のため千葉へ、午後はお客様との打ち合わせで都内へ。
久しぶりに移動が多く、ちょっと疲れました。


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