親のアパートの贈与を受けた際に相続税で影響すること

親の持っているアパートを、経営を譲るために子に建物の贈与をした場合は、相続税にも大きな影響を与えてしまう場合があります。

親がアパートも土地も持っていた場合

親がアパートを持っていた場合には、その土地は貸家建付地として評価されるので、通常の土地に比べて、おおむね2割ほどの土地の減額をすることができます。

賃貸用マンションの敷地の評価はおおむね2割引き

また、そのアパート経営を引き継いだ方がその土地を相続した場合には、小規模宅地等の特例を使うことができるので、200㎡までであれば50%ほどさらに減額することができます。

小規模宅地等の特例は限度があるため、自宅の土地などと併用する場合に使えない恐れもありますが、更地の評価に比べて40%程度の評価になります。

ところで、高齢になりアパート経営自体が負担となってしまい、経営権を譲るために贈与を考えた場合には、建物+土地とセットで贈与してしまうと、贈与税が高額になってしまいます。

そこで、建物のみ贈与することで贈与税の負担を少なくして経営権を譲ることが考えられますが、以下のような問題が起きる場合があります。

無償で借りる場合

土地の名義が親、アパートの名義が子となった場合には、子は親の土地を借りていることになるため地代をどうするかという問題が生じますが、払わなくても別に問題はありません。むしろ払わないケースの方が一般的です。

ただし、相続が起きた場合には、評価額に影響を与えてしまいます。

その土地は自用地評価となってしまいます。アパート経営をしている子に土地を貸していますが、無償の場合には貸宅地として評価しないので、減額評価することはできません。

また小規模宅地等の特例については、親と子がいっしょに住んでいる場合には、小規模宅地等の特例は使えますが、いっしょに住んでいない場合には、小規模宅地等の特例は使えません。

無償がダメなら1円なら、というものもちろん不可です。地代が固定資産税程度であれば無償でのやり取りという取り扱いになってしまいます。

いずれにせよ、相続税の負担は大きくなりますので、贈与する前には相続税がどのように変化するか見積もっておくことをお勧めします。

アパートの名義
 親 子(同一生計) 子(別生計)
権利関係 貸家建付地 自用地 自用地
小規模宅地等の特例 ×
土地の評価
(更地を100、小規模を使えた場合)
41 50 100

有償で借りる場合

土地を有償で借りた場合には、親の土地は貸宅地という扱いになり土地の評価が減額することができます。

ただし、有償で貸すことによって土地の権利が子に移ってしまうことにもなり、建物の贈与だけのつもりが土地の権利(借地権)も贈与したことになってしまいます。

贈与税の負担を抑えつつ、アパートの経営権を移転したつもりでも、土地の半分近くの贈与もしたことになり、大幅な負担増になってしまいます。

それを回避するには、借地権を買い取るか相当なる地代の負担をしなくてはならなくなり、金銭的にも大きな負担が必要です。

いずれにせよ、このケースでの土地の有償での貸し付けはやめておいた方が無難です。

<大事なこと>
アパートの建物のみを贈与することで経営権を譲ることができますが、一方で相続税や贈与税の負担も大きくなるケースもありますので、ご注意ください。

<昨日の出来事>
午前中にブログとランニング7.5km。風が強かったですね。
午後はお客様との打ち合わせでした。

 


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