相続があったときの、暦年贈与と相続時精算課税制度の取り扱いの違い

相続があった場合に、故人様から過去に贈与を受けていた場合には、その贈与でもらったものを相続でもらったものとして、相続税の計算に取り込む必要があります。

その際に、贈与税の計算を暦年贈与(通常の贈与税の計算)で行っていたか、相続時精算課税を使っていたかによって、過去の贈与のさかのぼり方が違います。

相続税の申告対象者

相続税の計算をする際に、故人様から過去に贈与を受けていた場合には、相続税の計算に反映する必要があるかどうかを考える必要があります。

故人様から贈与を受けていた方が、相続時精算課税制度を使っていた場合には、その方も相続税の申告の対象者になってしまいます。これは相続人でない場合であったり、遺言書で財産をもらわないなど、相続に関係のない方であってもです。

一方で、暦年課税の場合には、過去に贈与を受けていた場合であっても、今回の相続のときに財産をもらわない場合には、過去の贈与をさかのぼる必要はありません。これは、この方が相続人であっても相続税の申告の対象者にはなりません。

相続時精算課税を使った→必ず相続税の申告の対象者になる
暦年贈与→相続で何ももらっていなければ、相続税の申告の対象者にならない

さかのぼる期間

暦年課税と相続時精算課税では、さかのぼる期間にも違いがあります。

相続時精算課税では、過去の贈与のすべてを相続のときに精算するというものなので、すべての贈与にわたってさかのぼります。10年であろうが、20年であろうが関係はありません。とにかく、相続時精算課税制度を使い始めたときから、すべての贈与に対してさかのぼります。

一方で、暦年課税の場合には、3〜7年までの贈与に対してさかのぼればいいことになっています(相続でなにかもらっていることが前提です)。

さかのぼる期間が3〜7年となっているのは、令和6年にルールが代わって移行期間中だからです。最終的には7年になりますが、令和8年12月31日までに相続がおきたときまでは3年間です。

相続時精算課税→永久にさかのぼる
暦年課税→3〜7年さかのぼる

還付があるかどうか

相続がおきたときに、過去の贈与にさかのぼって、相続税も課税されてしまっては、相続税も贈与税もかかることになってしまいます。

そのため、過去に支払った贈与税は、相続税の前払いとして取り扱ってくれます。

仮に、過去に200万円の贈与(贈与税9万円)を受けていて、相続税が50万円だった場合には、納税額は41万円(50万円−9万円)ということになります。

基本的には同じですが、相続税より過去に払った贈与税のほうが多い場合には、取り扱いが違います。

過去に納めた贈与税が60万円、今回の相続税が50万円だったとします。

相続時精算課税制度を使う場合には、過去の贈与は相続のときに精算することになっているので、納税額が50万円−60万円で10万円のマイナス。つまり、10万円戻ってくることになります。

一方で、暦年課税の場合には、マイナスになっても足切りになってしまいます。相続税の納税がないだけで、還付はありません。

暦年課税の場合、相続税と贈与税はそれぞれ別のルールであり、そこで完結するのが基本です。それでもあえて、さかのぼる事になっているのは、相続税の操作ができないようにするためです。どちらかというと、例外規定です。その結果、相続税と贈与税の二重課税になってしまうので、二重課税部分を相続税から控除するとことになっています。

ただし、相続時精算課税制度を使って還付というケース自体、ほとんどありませんが。

相続時精算課税→還付あり
暦年課税→還付なし

<昨日の出来事>
午前に相続税の申告作業。添付書類の送付がやっぱり時間かかりますね。
午後は車の修理。

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